機内Wi-FiでSNSの動画を見たり、クラウド上の資料を編集したりする光景が、現実のものになってきました。
その流れを加速させているのが、SpaceXの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」です。
ただし、航空会社が導入を発表していても、すぐにすべての便で使えるとは限りません。
ZIPAIRのように全機への導入が終わった会社もあれば、一部の機材だけで始めた会社、導入初便を待つ会社、試験にとどまる会社もあります。
今回の記事では、2026年8月時点でスターリンクの導入を確認できる世界の主要航空会社について、実際の利用状況や利用条件、日本路線との関係とともに紹介します。
スターリンクが使える世界の主要航空会社
まずは、既に旅客向けサービスが始まっている主な航空会社です。「一部導入」の会社では、同じ路線でも搭載機と未搭載機が混在します。

| 航空会社 | 状況 | 対象となる主な機材 | 利用条件等 | 日本路線での利用 |
|---|---|---|---|---|
| ZIPAIR | 全機導入済み | B787-8全8機 | 全便・全席無料、登録不要 | 全路線が日本発着 |
| カタール航空 | 一部導入 (140機超) | B777・A350は導入完了、B787にも拡大 | 全クラス無料 | 羽田・関西便あり。機材による |
| エミレーツ航空 | 一部導入 (36機) | B777-300ER 33機、A380 3機 | 全クラス無料、登録不要 | 成田・羽田・関西便あり。機材による |
| ユナイテッド航空 | 一部導入 | 2クラス制ユナイテッドエクスプレスは327機完了。ユナイテッド本体機へ拡大中 | MileagePlus会員は無料 | 日本線は搭載機を確認 |
| ハワイアン航空 | 対象機材への導入済み | A330・A321neo。787は導入途中、717は対象外 | Atmos Rewards会員は無料 | A330なら利用しやすいか |
| アラスカ航空 | 一部導入 | E175、B737-8 MAXなど | Atmos Rewards会員は無料 | 日本線のB787は導入待ち |
| ウエストジェット | 一部導入 (737の100機超) | B737-800・B737 MAX 8など | WestJet Rewards会員は無料 | 成田便のB787は対象外 |
| エールフランス | 一部導入 | E190・A220・A350から拡大 | Flying Blue会員は無料 | 日本線も機材による |
| SAS | 一部導入 | A320シリーズから導入 | EuroBonus会員は無料 | 長距離の日本線は機材を確認 |
| airBaltic (ラトビア) | 全機導入済み | A220-300 | 全クラス無料、登録不要 | 日本直行便なし |
| ブリティッシュ・エアウェイズ | 一部導入 | B787-8から導入 | 全クラス無料 | 日本線も機材による |
| イベリア航空 | 一部導入 | 長距離機から導入 | 全クラス無料 | 成田便も機材による |
| エアリンガス (アイルランド) | 一部導入 | A330から導入 | 搭載機は全クラス無料 | 日本直行便なし |
| ヴァージン・アトランティック | 一部導入 | A350から導入、787・A330neoへ拡大予定 | Flying Club会員は無料 | 日本直行便なし |
| サウスウエスト航空 | 一部導入 | B737 | Rapid Rewards会員は無料 | 日本直行便なし |
※表は2026年8月時点での状況です。最新の導入状況は各航空会社のHP等をお確かめください
カタール航空は2026年6月時点で140機を超え、エミレーツ航空もB777とA380の計36機まで拡大しました。
いずれも日本へ就航していますが、まだ全機対応ではありません。
日本発着便で現在もっとも利用しやすいのは、B787-8全8機への導入が終わったZIPAIRです。
欧米でも導入は急速に広がっています。ただし、ユナイテッド航空は地域路線用(ユナイテッドエクスプレス)の機材での導入が先行しています。
SASではA320シリーズ、ブリティッシュ・エアウェイズはB787-8から始めるなど、対象は航空会社ごとに異なります。
全機への導入が終わっていない航空会社では、使えるかどうかは機材次第です。
事前に搭載機を確認できる会社もありますが、当日の機材変更まで含めて確実とは限りません。
これから導入する航空会社と試験中の航空会社
次の会社は採用や導入時期を発表していますが、まだ通常の旅客便で広く使える段階には達していません。
| 航空会社・グループ | 状況 | 発表されている内容 | 日本路線との関係 |
|---|---|---|---|
| ルフトハンザ | 導入予定 | 2026年8月19日にA320neoで開始予定。Travel IDまたはMiles & More会員は全クラス無料 | 初号機は欧州内路線。日本線の開始時期は未発表 |
| ルフトハンザグループ | 導入予定 | グループ10社、約850機へ2029年までに導入 | SWISSやオーストリア航空などの日本路線も、搭載順は未発表 |
| flydubai | 導入予定 | B737を中心に2026年中の開始を計画 | 日本直行便なし |
| 大韓航空・アシアナ航空・ジンエア・エアプサン・エアソウルの韓進グループ5社 | 導入予定 | 早ければ2026年第3四半期。大韓・アシアナはB777-300ERとA350-900を優先 | 5社とも日本路線あり。開始便は未発表 |
| アメリカン航空 | 導入予定 | 2027年第1四半期から500機超のエアバス単通路機へ導入 | 対象は主に国内・近距離機 |
| シンガポール航空 | 導入予定 | 2027年第1四半期からA350長距離型・A380へ導入 | 日本線でも使う機種だが、開始便は未発表 |
| ニュージーランド航空 | 試験中 | 国内線A320の1機とATRの1機で無料試験 | 日本―ニュージーランド線は対象外 |
※表は2026年8月時点での状況です。最新の導入状況は各航空会社のHP等をお確かめください
ルフトハンザは8月19日に最初のA320neoで始める予定です。当初は欧州内路線が中心で、日本線への導入時期はまだ発表されていません。
スターリンクは従来の機内Wi-Fiと何が違う?
スターリンクは、従来型の機内Wi-Fiより飛行機に近い位置を飛ぶ衛星を使います。
電波が往復する距離を短くできるため、画面を押してから反応するまでの待ち時間も短くしやすいのが特徴です。
これを低軌道衛星(LEO)と呼びます。
スターリンクの衛星は地上から約550kmを飛ぶのに対し、従来から広く使われてきた静止衛星(GEO)は約3万6,000km上空にあります。

待ち時間が短くなると、Webサイトを見るだけでなく、動画の再生やクラウド作業なども快適になりやすくなります。
スターリンクの航空向け最新機器は1機あたり最大1Gbpsと案内されていますが、乗客一人にその速度が保証されるわけではありません。
実際の速さは、同時に使う人数や飛行地域、混雑状況によって変わります。高速回線でも音声・ビデオ通話を禁止する航空会社があるため、Wi-Fiの利用ルールは別に確認が必要です。
もちろん、衛星が近いから簡単に導入できるわけではありません。機体上部へのアンテナ設置や客室内の配線、機種ごとの認証が必要です。
そのため、大手航空会社でも全機への導入には数年かかることがあります。
ANA・JALではスターリンクを使えない?
ANA本体とJAL本体は、スターリンクの採用を発表していません。
ただし、両社とも機内Wi-Fiの改善を止めているわけではなく、別の通信会社とサービスを更新しています。

| 会社 | スターリンクの導入 | 現在の主なサービス | 今後の計画 |
|---|---|---|---|
| ANA | 発表なし | Panasonic Avionics、Inmarsat、Viasatを利用。Viasat搭載の一部767は全クラス無料で動画視聴も対応 | B767-300ER 6機や新造B787-9、B777-9へViasatを拡大。2030年末に国際線の80%超を無料高速化 |
| JAL | 発表なし | A350・B787・B767・B777はPanasonic Avionicsが中心。ファースト・ビジネスは無制限無料、プレミアムエコノミー・エコノミーは1時間無料 | A350-1000計13機にもPanasonic Avionicsのシステムを採用 |
| ZIPAIR | 全機導入済み | B787-8全8機で全便・全席無料 | 2026年5月に全機への導入完了 |
ANAはViasatで無料・高速化を進める
ANAは2025年8月、Viasatを使った無料の高速インターネットを国際線B767-300ERで始めました。
対応機では全クラス無料で、動画も視聴できます。
さらにB767-300ER 6機と、新造のB787-9 19機、B777-9 18機などへ導入し、2030年末までに国際線の80%超で無料高速Wi-Fiを提供する計画です。
細かな契約条件は公開されていませんが、ANAはすでにViasatを使った改修計画を進めています。
既存設備や契約との兼ね合いもあり、短期間でスターリンクへ切り替えるのは簡単ではないのかもしれません。
JALはPanasonic Avionicsを中心に運用
JALの国際線では、A350、B787、B767、B777を中心にPanasonic Avionicsの接続サービスを利用しています。
新しい国際線主力機A350-1000でも同社の機内エンターテインメントとWi-Fiを採用し、計13機へ搭載する計画です。
Panasonic Avionicsとの細かな契約内容は非公開ですが、A350-1000でも同社システムを採用しており、既存設備や契約との兼ね合いはありそうです。
一方、Panasonic側も高速化を進めており、スターリンク以外の選択肢が止まっているわけではありません。
JALは現行サービスを使いながら、通信環境を改善する道も取れます。
ZIPAIRの全機スターリンク導入は何を意味する?
ZIPAIRはJALの100%子会社で、2026年5月にB787-8全8機へのスターリンクの導入が完了しました。
機内Wi-Fiの利用には、全便・全席無料で、会員登録も必要ありません。
この実績から分かるのは、JALグループ全体がスターリンクを避けているわけではないということです。
ただし、ZIPAIRは同じ機種を8機運航する比較的小さな会社です。多くの機種と既存の設備を抱えるJAL本体へ、そのまま当てはめることはできません。
ANAやJALが将来スターリンクに切り替える可能性はゼロではありませんが、導入時期を示す発表は出ていません。
現時点では、ANAはViasat、JALはPanasonic Avionicsを中心に改善を進めていると見るのが自然です。
なぜ海外でスターリンク導入が広がっているのか
海外の航空会社では相次いでスターリンクが導入されていますが、その使いやすさに加え、無料Wi-Fiを会員獲得につなげやすいことも理由の一つです。
ユナイテッド航空、ハワイアン航空、エールフランス、SASなどは、無料の自社会員への登録と利用を結び付けています。
航空会社にとっては、単にWi-Fiを無料でばら撒くのではなく、会員登録してもらうことでお客様との接点を増やせます。
乗客にとっても、エコノミークラスで快適なWi-Fiの中で動画を見たり、仕事ができたりすることは、航空会社を選ぶ理由になります。
これまで、機内Wi-Fiがあったとしても、速度が遅くて結局メールやチャットをチェックする程度しかできなかったり、ファーストクラスなど上位クラスの顧客のみが利用可能だったりなど制限がありました。
たとえ空の上であっても、誰でも快適なネット環境に無料で接続できる未来はそう遠くないでしょう。
まとめ|機内Wi-Fiも航空会社選びの材料になる
2026年8月現在、スターリンクはZIPAIRとairBaltic(ラトビア)で全機に搭載され、カタール航空やエミレーツ航空では長距離機への大規模な導入が進んでいます。
欧米でも一部機材から始める航空会社が増え、ルフトハンザやシンガポール航空なども続く予定です。
ANAとJAL本体はスターリンクの導入を発表していませんが、別のサービスで高速化を進めています。
これからは運賃や座席、マイルだけでなく、予定している機材でスターリンクなどの高速のインターネットが使えるかも、航空会社選びの一つの材料になりそうです。










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